コホ、と出た軽い咳とともに、打ち込んだそれを送る。


『和泉くん、今日は待ち合わせなしで』


咳を押さえつけながら待機していると、しばらくして、短い返信が返ってきた。


『どうしたの』


文面が短いのは和泉くんの性格もあるけど、あんまり長く打つと返信に手間取ると踏んだんじゃないかな。


わたし、文面を見直しすぎて、返信遅いからなあ。

長文だとなおさらだもん。


ええと、と少しぼんやりする頭を働かせて、できるだけ短く速く打つ。


『風邪引いちゃって』


こちらも短く書いたお休みの理由は、本当はもっと語れるくらいには長いんだけど、手短に、手短に。


語ると止まらないのは明白な事案だからね。


『お見舞い行こうか』


和泉くんって、こういうことさらっと聞いてくれるから優しい。


風邪、というか症状は軽いし、一人が寂しいたちだから、来てくれたら嬉しいけど。


でも、和泉くんを風邪菌にさらすわけにはいかない。


『ううん! 移ったら大変だから!』


あと、ちょっと喉が痛い。


よく話すわたしがあんまりしゃべらなかったら、和泉くん絶対気にするもん。


電話じゃないのがいい証拠。


この部屋は今、わたしの風邪菌に満ち満ちている。


用心に越したことはないよ。