真っ暗な通りを、あたしは重たい足で歩いて行く。


 先生……じゃなかった、玲汰先生だ。

 玲汰先生の家からの帰り。


 全く話さないあたし達だけど、何故かあの空間はあたしの冷え切った心を温かくしてくれる。

 だから、あの日以来あたしは毎日玲汰先生の家に訪れている。



 ……だけど、家に帰るこの道はいつも残酷な現実に包まれていて、あたしの心はまた、冷やされていく。





 こういう時、つい思ってしまう。


 あの時、あんなことを言わなければ。

 あの時、あんなことをしなければ。


 あたしも、夏希も。

 みんながきっと。


 幸せに過ごしてたんじゃないかって。

 笑顔で、みんな楽しく。

 生きることが、出来たんじゃないかって。



 ただ、事実は変わってはくれない。


 いくら、願っても。

 いくら、祈っても。



 自分が、乗り越えるしかないのだ。


 でも、乗り越えるもなにも、あたしにはそんな資格ない。

 忘れちゃ駄目だから。

 あたしは、あのことに苦しんで生きなければならないのだ。



『あんたなんて死ねばいいのよ!』