ペタッ。


ペタッ。



頭に響く嫌な足音。


自分の手を見れば真っ赤に染まった両手。


視線を左に移すと、すらっと伸びた白くて細い足。その足に点々と色を添えている赤い血。


足首までの白のレースの靴下はやけに白い足にマッチしていて、厚底の光沢のある真っ黒な靴が輝いている。


それでも目を引くのは真っ赤な色で。


恐る恐る右へと視線をずらした。



「キャアァァァァァァア!!」



悲鳴と共にガバッと身を起こしたひな。



ゆ、夢……。


やけに生々しい夢だった。



「どうした、ひな!?」



慌てた様子で、部屋のドアからひょこっと顔を覗かせたのは亮介だ。


白と黒で纏められたベッドに可愛らしさは全くない照明。


ひなが居たのは亮介の寝室だ。


昨日亮介の部屋に入ってから、目が覚めたら3年後の世界に居たこと。誰にも気付いて貰えない消えかけた存在になっていること。電話も亮介以外繋がらない事等を大まかに説明した。


その際、サトシの事は一言も言わなかった。


サトシは人に知られるというのを恐がっている節があったのもあるし、何よりサトシが何者かという事がハッキリとは分かっていないからだ。


サトシはひなと同じだったと言っていたが、それも本当かは分からない。


ただ、ひなはサトシの言葉を信じている。



「だ、大丈夫。ちょっと怖い夢を見ただけだから…」



それに「夢…か」と思案顔で亮介が呟く。