ペタッ。


ペタッ。



真後ろから聞こえてくる嫌な足音。


その音に背筋が震え上がるのが分かる。


そっと自分の両手を見てみれば、真っ赤に染まった掌。



これは、……誰の手?





「イ、…イヤアァァァァァァア!!」





叫び声と共に、ベッドから上半身を起こしたひなの表情は真っ青で、ガタガタと小刻みに身体を震わせる。


そしてキョロキョロと周りを見渡すと、一度ふうっと息を吐き出した。


ひなの額から流れた冷や汗のせいでか、顔に髪がへばりついている。


その髪を右手でそっと払う。


ひなの怯えた様な目に映るのはひなのよく知っている光景。


窓から射す明るい朝の日差しが部屋を照らす。


ここは、間違いなくひなの部屋だ。



夢……。



そっとひなは自分の両手の掌を見下ろすも、そこにあるのは何の変てつも無いいつものひなの手。


真っ赤な色なんて欠片もない。



凄く、嫌な夢……だった。


……でも、……どんな夢だったか全く覚えて無い。



そんな思いがひなの頭を駆け巡る。それと共に、ブルッと身体を震わせた。


兎に角ベッドから出ようと立ち上がろうとした瞬間、ズキッと頭に鋭い痛みが走る。



「いったぁ……」



痛みが走った頭をゆるゆると手で撫でるも、ズキズキとした痛みは消えてくれない。



もしかして、この頭の痛みが怖い夢の原因なのかも。



そう思うと、さっきまでの何に怯えているのか分からないが、震える様な恐怖はたいした事ではなかったのだと思えてくる。


部屋の時計を確認すると、今は朝の6時50分だ。


いつもより遅めの起床時間。


でもそれも今日は仕方無いと思えてしまう。