「ちょっと!ひな!聞いてる!?」



真由美の声がひなの耳に届く。


目の前にあるのは短大の教室で、ひなの隣には真由美が座っている。



「…………えっ」


「ぼけっとし過ぎでしょ」



唇を尖らせてぽんっとひなの頭を叩く真由美に開いた口が塞がらない。



「真由……美?」



真由美が居る。


居るだけじゃない。


真由美がひなに話し掛けているのだ。



「どこをどう見たら真由美じゃなくなるのよ」



訝しげな顔をする真由美。


その真由美の目は紛れもなくひなへと向けられている。



「…………私が見えるの?」


「はぁ?何言ってんだか。見えてなきゃ、話し掛けないでしょ」



震える唇でそう紡ぐひなだが、真由美は訳が分からないという風に首を傾げる。



これが現実。


だとしたら、さっきまでのは……。



「そっか。……あれは、……夢…?」



そうだ。きっと、夢。



そう思うのに、最後の亮介の表情がひなの頭にこびりついて離れない。



「ひな?」



真由美が心配そうにひなの顔を覗き込んだ。



真由美と話が出来ている。


真由美に自分が見えている。


やっぱり、あれは夢だったんだ。



「ごめん。なんか変な夢見てたみたい」



フフッと笑ってそう言うと、机の上に出していたルーズリーフへと目を向けた。


その時、


「キャッ!!」


ガタンッと座っていた椅子を鳴らして立ち上がったひなの顔色は真っ青だ。