『ゆうー!!』
笑顔で手を振る姉
私が施設にいた時の話だ
私は施設の中で、お姉ちゃんと遊んでいた
「ねえ、ゆう」
「なーに?」
「あたしたちのおかあさんは、いまどこにいるのかな?」
こまった
「あいたいな、ねえ、ゆうもそうおもうでしょ??」
だいすきなお姉ちゃんの頼みだった
「お願いです。母さんと会わせてください」
「いや、だけど、」
「お願いします。お姉ちゃんは、母さんが本当に大好きだったんだ」
「お姉ちゃんの願いを叶えてあげたいの」
みたら後悔することになる
施設の人はそういった
私は、お姉ちゃんと
母さんのいる別の施設に行った
大きな硝子の向こうには、固いベットの上で人形を抱き、幸せそうに笑う母さんがいた
「おかあさん!!」
「ゆうかだよ!ほら、ゆうもいる!」
母さんが見えるように繋いだ手を引っ張る
母さんには聞こえていないらしい
わたし達には、母さんの声が聞こえるのに
『優香?』
名前を呼ばれ、目を輝かせるお姉ちゃん
『も~優香ったら、またこんなににんじん残して』
『あそこにいるお友達に笑われちゃうわよ〜?』
母さんは、私が嫌いでしょうがなかった
そのストレスが爆発して、記憶から
私の存在を、消した
私の顔も忘れてしまったのだろう
私の声も忘れてしまったのだろう
お姉ちゃんの顔も
握っていた手がもっと強く握られたのがわかった
お姉ちゃんの幸せが、私の幸せだったのだが
願いが叶ったら、お姉ちゃんは、不幸になってしまった
母さんに言われたそれを思い出す
『アンタが幸せになったら、まわりの人間は不幸になる』
母さんをこんなにしてしまったあの日に
私が言われた言葉だ
あの言葉が本当になってしまった
その日以来、お姉ちゃんには会ってない