彼に出逢った日は金曜日で、私は研修先の先輩方に夜ご飯に誘われていた。
連れて行かれたのは河原町の古びたビルの中にある青いドアのベトナム料理店。先輩が味は保証するという。

青いドアをくぐり、先輩が選んだテーブルに座り、メニューを眺めるが、私はあくまでも研修中の小娘なので、先輩方にメニュー選びは任せていた。
私は夏休みを利用して、高校を卒業したら就職する予定の帯問屋で帯を織らしてもらっていた。その研修もあと一週間ということで、可愛がってくれたお姉さん達が企画してくれたのだった。
私はなんとなくこのお店の雰囲気が気に入り、あたりを見回していた。
そしたら、青いドアがベルを響かせながら開いた。