それからというもの、一紗はうちに入り浸ってる。
「経理の宮内さん、奈良原さんと付き合ってるらしいよー」
「えーっ、そうなんだ、奈良原さんイケメンだからなんかショック」
「なんでも、奈良原さんがベタ惚れなんだって」
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「って噂を聞いたんだけどー、ほんとですかー」
入り浸りだして2週間。
麗が拗ねたように言った。
「付き合ってはいないんだけど奈良原さんがベタ惚れってとこは本当です」
「…………」
「言うねぇ」
「……ねぇ、なんでアンタここにいるの?」
腕組みしたままニコニコ笑ってる一紗を見上げる。
ここは経理部。
「今、橘さんに書類を渡しに」
「だったら橘んとこ行きなさいよ」
橘のデスクは通路を挟んで向こう側だ。
「紗弥さんがいたから、つい!」
"つい!"じゃないわ。
「じゃ、紗弥さん、また」
「もう来なくていい」
スタスタと歩いていく一紗を見送り、ため息をついた。