誰もいない鉄の塊の街。もう名前は忘れてしまった。唯一、この街が“ち”から始まる事だけは微かながら覚えている。
僕はその街を歩く。足元には僕が殺した肉の塊。
見下ろして思い切り蹴飛ばしてやった。ごろりと塊を動く、同時に手だった所がもげた。僕は気にしない。だってもう機能したい『生き物』だから。
ふと、蹴った肉の塊を見て嫌な思い出が脳裏を駆け巡り疾風の如く駆け抜けて行った。
…僕が小学校に入学する前の事だった。
僕の父さん…名前は忘れた。取り敢えず『奴』と呼ぶ事にしよう。
奴は僕の母さんに殺された。僕が4歳の時だ。理由は僕と母さんを“虐め”ていたから。単純な理由だな、なんと思う人もいるだろう。だが、母さんが殺さなくてならない程酷かったのだ。後々知ったが、奴がやっていた“虐め”は“虐待”だった。