歌が聞こえる。とても澄んだソプラノの歌声。

歌を歌う彼女の眼は蒼。髪は茶のショート。だが横髪は長く胸迄有る。くすんだ薄水色のワンピースが印象的だ。紺の太股迄有るソックスに黒のブーツ。
彼女は廃屋のビルの屋上で一人歌っている。街は血塗れ。人の賑わいも鳥の声も森も木も無い。有るのは人の骨、死体、遺体。動物のものも中には有るかもしれないが、それももう分からない。街の中央には血の湖。底には白骨。水面に行くに従い、腐ったもの、辛うじて形が分かる物、半分腐っているものとある。
彼女の隣には大きな狼。元の色は白いのだろうが、血を浴びている所為も有り白が余り無い。荒い息で呼吸するそれの鼻を撫でてやり彼女は街を見下ろした。

「一年でやっと夢が叶った」

小さく呟いた声は風に乗り消え去った。

これから語るのは彼女の現在過去未来の話である…‥。