ケータイ小説 野いちご

花の名は、ダリア

散らない花は美しいか


静かだ。

あまりに静かだ。


(今日に限って…
なんでだろ?)


団扇片手に縁側に腰掛けたソージは、軽く首を傾げた。

ここ数日、こんなに静寂を感じることはなかった。
生活自体に大きな変化はないのだが、心はどこか浮き足立っていた。

まぁ要するに、近頃ソージは楽しかったのだ。

もう五月も終わる。

ますます身体が重くなり、もうたらいに水を張ることもできなくなった。

ますます食べ物を受けつけなくなり、ますます吐き出す血の量が多くなり…

ますます死の気配を近くに感じる。

それでも、ソージは楽しかったのだ。

このまま心穏やかに瞼を閉じるのも、悪くないと思えるほど。

なのに…

今日は静かだ。

どうしてかって?

答えは明白。
バーサンが来ないから。

時はもう夕刻。

禍々しいほど鮮やかな朱を覆い隠してゆく濃紺の空には、一番星が輝き始めた。

バーサンがこんなに遅くなることなんて、今までなかったのに…

ソージは今度はさっきとは逆方向に、再び首を傾げた。


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