二人が出逢ってから、長い時が流れた。
けれどまだ、一緒にいるよ。
「コレは…
ヒドい臭いですね…」
「そうね。
鼻にティッシュでも詰める?」
「…
鼻血塗れの殺し屋と一緒にされるのは、死んでもゴメンです。」
テムズ川から漂う異臭に顔を顰めていたソージは、悪戯そうに笑うダリアを見下ろして唇をひん曲げた。
…
そんなに嫌か。
殺すゾ、コラ。
あれから二人で色々な国を巡った。
ソージも、ある程度の言語を操れるようになった。
二人が向かう場所はいつも、混沌と猥雑に溢れている。
命が軽んじられているような。
死が日常化しているような。
そんな場所には魔が潜みやすい。
『穢れし者』たちも、潜みやすい…
もう結構な数を眠らせたンだケドさ。
行った場所にいないコトもあったンだケドさ。
ダリアは旅をやめようとはしない。
まるで、今もどこかで『穢れし者』が誕生していることを、確信しているように。
旅をして。
見つけて。
『おやすみなさい』を言って。
それを繰り返して。
二人はロンドンのイーストエンドに辿り着いた。