〜愛しい日々と〜



「女の子って結構、大変だよな?」


慣れない手つきで、ボールの中の溶けたチョコレートをヘラで混ぜる。
蓮はボールを両手で押さえる係り。
風人はチョコレートを溶かす係り。


二人は雑誌の企画のコーナーで、チョコレート作りをしている。
来年のバレンタインに向けてのさきがけ企画。
『男が送る、簡単手作りバレンタイン♡』


「ほんと。オレは無理だな。買う。絶対、買う。その方が早い」



トロットロに溶けて行くまろやかなチョコレートの海を見つめながら、蓮が言う。
その目は調理助手と言うより、何かの実験の助手のよう。
真剣に一点を見入っている。


「ちょっと。何か怖いよ。妖怪でもいた?」


蓮の方を見て、風人が笑いかける。


「すごくない?あんな固かったのが、トロットロ。トロントロン」


蓮のその言い方に風人はまた笑った。