朝日で目が覚めるとすっかり雨は止んでいた。

 カーテンを開いて、ガラスの窓を開ける。

 雲ひとつない空が広がり、落ち着いた雰囲気の風が、清々しく部屋に流れ込んできた。

 昨夜の雨をたっぷり吸収したラベンダー荘の庭は、いくらか厚みを増したように見える。

 「おはよう、優子」

 今日の朝食当番のかおりが、白い無地のエプロンをつけたまま、玄関から出てきて、窓から顔を出している私に気づいて声を投げた。

「おはよー。すっかり晴れたね」

 私も手を振りながらそう答える。

 かおりは、一つに結った髪を揺らしながら、門についた木製の郵便受けを覗き込む。

 どうやら今日も、ラベンダー荘への入荘の応募が届いているらしい。

 どれも一見、何の特徴もない茶色や白色の封筒にそれは入っている。

『失ったものが見つかる』といううわさだけに、他人にはいえない記憶と結びついていることが多く、無意識に人の心に隠そうとする意識が働くらしい。

 かおりが次々にめくっていくそんな封筒の中に、一際目を引く一通のはがきが見えた。

 かおりは、そのはがきを見つめたまま止まっている。

 少しして、顔を上げたかおりは、複雑な表情をしてこちらを見上げた。

「朝食、もうすぐできるから、今日はアキラも無理やり起こして連れてきてね」