「本当に怖かった……ちょっとジョー、何笑ってるの? 」
ペトラがむすっとした顔をする。
「ごめんごめん。いや、あんまりにもペトラが怖がってたもんだから」

訓練兵団に入って早々、ジョーたちは洗礼を受けた。
教官が一人一人に名乗らせ、入団理由を尋ねるというものだ。

「そう言えば、ジョーは何も言われなかったね」
「あ? そう言われると、そうだな」
ほんの僅かだったが、教官の洗礼を受けなかった者もいる。
ジョーもその一人だった。
「どういう基準なんだ……? 」

その後、数人ごとに部屋が与えられた。
そして夕食のため一つの部屋に集まった。

「どうだった? ルームメイトは? 」
ペトラの隣に座りながら聞いた。
「うん。優しい良い人たちだったよ」
それは良かった、と言って水を一口飲む。

「横、いいか? 」
不意に話かけられて相手を見る。
「おう。ん? 同じ部屋だよな? 」
「あぁ。エルドだ。エルド・ジン」
エルドはニッと笑った。
「俺はジョー・カンパニオンだ。宜しく。……確か憲兵団志望だっけ? 」
「あぁ、よく覚えてるな。……横にいるのは彼女か? 」

ジョーは思わず苦笑した。
「残念ながら違うよ。こいつはペトラ。俺の幼馴染みだ」
ペトラとエルドは宜しく、と互いに言った。

「幼馴染みで仲良く入団か? 」
突然ジョーの斜め前から声がした。
「あぁ、お前はよく覚えているぞ! さっき舌を思い切り噛んだな。名前は……オルオ、だっけ? 」
オルオは体を固まらせた。
舌を噛んだのを掘り返されて気まずいようだ。
「お……俺だってお前のことを覚えているぞ! 名前は……ええと……グンタだ! 」
「それは俺だな」
ペトラの横から声が出た。
ジョーは笑いながら言った。
「俺はジョー・カンパニオンだよ。確か二人とも同じ部屋だな。グンタは調査兵団に入って両親に恩返しするんだよな? 」
「そうだ。宜しくな」

そうやってしばらく五人で談笑していた。