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風が吹き抜けていく。

まだ綺麗な薄紅の花びらが数枚、足元でくすぶっていた。

「じゃあ、凛、また明日」

男の子みたいに短いショートヘアをゆらりと風に遊ばせ、大きく手を振る真央。

「うん、またね、真央」

立ち止まったまま笑顔で小さく手を振る私。

真央は高校生になったばかりで短くしたスカートをはためかせながら、小走りで遠ざかっていった。

「さて、私も帰らないと」

顎をあげると、雨のように降る緑の交じった枝垂れ桜の大木が、今日も私を見下ろしていた。

そんな桜の脇には、たくさんの木々と、山へと向かってのびる古い石段。

私は石段の端に足をかけ登りはじめる。

周りは森に囲まれていて、進むごとに緑は濃くなっていく。

石段の方まで張りでている枝葉は風にあおられ、私の耳のすぐそばでお構いなしにざわめいている。

ふと石段の先を見上げれば、緑の中に鮮やかな朱色の鳥居が見えてきた。