退院後の初めての登校は、哲哉先輩が迎えに来てくれることになっていた。

毎日響ちゃんを起こしに行っていた日常は、もう二度と戻らないだろう。

窓から見える響ちゃんの部屋は、カーテンが風に吹かれているだけで、人の気配がない。

ご飯、食べてるのかな……。
おばさんのフレッシュジュース、今日はなんだろう。

気が付けばそんなことばかり考えていた。


だけど私は、新しい生活を始めるのだ。
哲哉先輩、と。


「おはようございます」


緊張で朝食も喉を通らない私を呼びに来てくれたのは、哲哉先輩だ。

玄関で対応してくれた母は、病院で何度も顔を合わせていて、先輩ともすっかり打ち解けている。


先輩と付き合い始めたころ、なんとなく母に交際を知られたくないと思っていた私も、献身的に私に係わってくれる先輩に、心を許していた。