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「今日、終わったら行くよ。」




非常階段。



踊り場に設置された灰皿スタンドに、ぐいっと煙草をもみ消しながら、葛西先生は私を見上げた。



「うん、待ってる。」



嬉しくて仕方ないのに、感情を表に出さずに返事をする、私。



そんな私に目を細めながら、


「授業、頑張れよ。」


と、先生は私の頭をくしゃっくしゃっと触る。



「みっ、見られるから。」



焦る私を置いたまま、先生は振り返ることなく教務室へと続くドアを開けた。



高校生の頃から、埋まらない距離間。



先生×生徒…?


先輩×後輩…?


そして、今は、上司×部下…。