途切れ途切れに、涙に濡れた声が聞こえる。 別れたくない。 どうして。 お願い。 まだ好き。 ああ、……聞きたくない。 なにが嬉しくて、女の泣き声を聞かなきゃならないんだ。 耳を塞ぎたくなる衝動を堪え、俺は壁にもたれかかって、そして、 ────マンションのお隣さんの別れ話をひとり聞いた。