翔のプロポーズから、約2時間半。

あたしたちはリビングのソファに座りながら、お笑い番組を見ていた。


後ろには、楽しそうに料理をするお母さん。

鼻歌まで口ずさんでいる。



「それにしても、いきなり何事かと思えば、結婚するだなんて…。
びっくりさせないでよ」



急に思い出した口調で話し出すお母さんの言葉に、あたしと翔の顔はみるみる赤くなる。


お母さんに結婚のことを話したのは、あの後すぐ。


手を握りながら現れたあたしたちを、最初は冷やかしていたお母さんだったけれど、その空気からただ事じゃないということを察したのだろう。


ガスコンロの火をとめて、1人がけのソファに座ったお母さんは、『座りなさい』と、向かいにある2人がけのソファを指して言った。



『美音と、結婚させてください』



翔はソファには座らず、思い切り頭を下げた。



『…翔くん…?』



きっとお母さんは、こんなことを今日言われるだなんて、予想もしていなかっただろう。