翔に電話を切られてから約2時間が経過していた。


居場所を教えてはいないのに、彼はあたしのいる場所を知っていたようで。

ただ呆然と部屋を眺めるあたしの耳に届いた、バタバタと階段を駆け上がる足音。


考える間もなく、あたしにはその足音が誰のものなのかがわかってしまった。


ノックもせずに扉を開けた翔は、全身に汗をかいている。


ハアハアと息を切らし、ドアノブに手をかけたまま驚いた表情をする、翔。



「美音…お前…」



きっと、あたしの真っ赤になった瞳を見て驚いているんだろう。


こんな表情の翔、見たことない。

あたしがそんな、悲しい顔をさせちゃってるんだ。


翔は、今でも涙が止まらないあたしに、ゆっくりと近づく。


彼はもう、あたしの病気のこと知ってるのかな。


もしかしたら、振られちゃうのかもしれない。


"お前みたいな病気もちの女とは、付き合えない"って。


それはそれで、あたしは受け止めるしかないんだと思う。