「ファビウス! 時間!!」

お玉とフライパンを手に、カンカンと打ち鳴らし、いまだベッドの上で眠っている彼を起こす。


あたし、アール。

ひょんなことからこの広い屋敷で住まわせてもらっているの。

それで、ベッドの上で眠っている彼の名前はファビウス・アレビノ。

孤児院育ちで家族がいない、あたしの里親になってくれた最愛の人……。

ファビウスは投資家で、しかもすごいお金持ち。

そんなだから、あたしっていう同居人がひとり増えたくらいじゃお金には困らないらしい。


彼とあたしが両想いになった後、彼はすぐにあたしの家族になってくれた。


だから正式なあたしの名前は、アール・アレビノ。

だけどそれだけじゃない。

あたしがいた孤児院の経営が難しいと知った彼は、なんと孤児院に寄付までしてくれたんだ。


もう、あたしみたいな目にあわせることがないようにって、彼はそう言って……。