――――……。



チュンチュン。

小鳥のさえずりがどこか遠くで聞こえる……。

いつの間に眠ってしまったのだろう。

あたしは体の重心を前に倒して、分厚い絨毯(じゅうたん)の上から起き上がる。


すると、あたしが立ち上がったのを見計らったようにして、固く閉ざされた扉から、ひとりの男が入ってきた。



すらりと伸びたモデル並みの体型。


高い鼻梁に、サファイアの瞳。

引き結ばれた、薄い唇。

端正な顔立ちをした象牙色のこの男――――。


誰だって、彼の内面を知らなければとても美しいと思う。

かくいうあたしだって、はじめて彼を目にした時、あたしよりもずっと背が高いこの男のことを、不覚にも天使かと思ったくらいだ。



だけど実際はそうじゃない。

内面は悪魔のように冷たく、凍った心をしていた。


この男の名はファビウス。


彼と出会うきっかけになったのは、今からちょうど一週間前――。