二人は、ジュノの家の前まで一緒に来ていた。とは言っても、ただカゲンがジュノに付いて来ていた だけなのだが......。

「それじゃあ、これで」

ジュノは、家のドアの前までたどり着くと
言った。

カゲンは、ただ黙って見つめている。

「何? ......どうかしたの?」

「いや、ただ、ナキアは......恐らく何かを隠してる。確実に俺達の何かを知っている」

「......そうね。でも、あまり深い事は考えない方が......」

そう言って、少しだけジュノは無理にも笑顔を作った。

「......また明日」

「また、明日」

彼は、少し照れながら返事をした。


彼女は扉を閉めると一息ついた。

何気なく誰もいない部屋の中を見渡す......。


あるのは、何かの目玉が入った瓶や血のよ
うに赤い液体が入った瓶などがずらっと並
んでいる棚。

それらを、混ぜ合わせて薬を作る為のツボ
が置かれてある。


............ドン、ドン、ドン。


彼女はドアの突然叩く音で、心臓が跳ね上
がった。

振り向くと、少しだけ扉を開き顔を覗かせ
るカゲンがいた。

「入っても、いいかな。
..................一人だと落ち着かない」

「カゲン、驚かせないでよ」

そして彼女は口角を上げて、言った。

「いいわよ」

カゲンが中へ入るとジュノは言った。

「私もよ。一人だと............落ち着かない」

ふと、ジュノの背後の棚に並ぶ奇妙な物体が気になり足を進めた。

彼は、瓶の中身を見つめた。

その瓶の中にはドロドロの何かの血のよう
な赤い液体が入っている。

「そこにある物、何だかわかる?」

「うーん、そうだなぁ......」

すると彼は、白い液体の入った瓶が目に入
り 手に取った。

「これ、ヘリオスのあれだろ?」

「それは花の蜜よ。カゲン」

彼は大人しく瓶を少し気まずそうな顔を
して元の棚に戻した。

ジュノはあきれ顔をする。

「それにしても、こんな物を何に使うんだ?」

「300年前、私はヴィーナス女王から闇の精
霊を封印する仕事が与えられたの。
ここに置いてある物は全て、そのために
使う薬の材料よ」

彼女はふと、不安げな表情を浮かべた。

「..................だけど、今の私のなら
いつ封印が溶けても おかしくないわ。
また、彼らが暴れだしてしまうかもしれな
い............」

カゲンは、ジュノのすぐ傍に近づいた。

「......」

カゲンは、ジュノの不安が滲み込んだ瞳を見つめる。

「仕事ができない神はどうなるのか。
......定めについては、あなたも知っているでしょう? ..................私......」