「え?嘘!鈴木くん駅前の大きなマンションに住んでいるの?」

「そうだよ」

数年前できたばかりの真新しい分譲賃貸型タワーマンションだ。

出来たばかりの頃にチラシが入ってきていたが、独身20代のサラリーマンが借りられるような値段ではなかったはずだ。

確かに鈴木くんは我が社のエースで給料にももちろん反映されているとは思うが。

(もしかして鈴木くんって、どこか良い所のお坊ちゃんなのかしら)

よく考えてみれば、魚の食べ方や箸の使い方はどことなく品があって、育ちの良さを感じさせた。

急に不安になってきた。

当たり前に出していた食事だが、実は口に合っていなかったのではないだろうか。

佐藤家の食卓に上がるのは大概、特売の肉か半額の魚か野菜ばかりだ。

思わず鈴木くんが口に運んでいるスプーンを見てしまう。