高校の入学式から早3ヶ月。

 夏休み目前のその日。

 茹だるような暑さと、虫の鳴く声。

 肌を撫でる生暖かい風と、こめかみを流れ落ちて行く汗。

 そして、口の中に広がる鉄の味。

 日が暮れて街灯がぼんやりと輝き出した頃。

 渋々家路に着くこども達の声をなんとなく聞きながら、俺は両脚を投げ出して、公園のベンチに凭れ掛かっていた。

 薄っすらと輝き出した星を何と無く見ていたけど、ふと、隣に座る彼が気になって声を掛けてみた。


「──ヒサギちゃん」


 俺の呼び掛けに対する返事は無かったけど、ザッ、と砂を蹴る音が聞こえた。

 それが返事なんだと勝手に解釈して、あのさ、と話し始めた。