【本編p473~:恭也と慶、電話での会話】


 深夜、枕元で鳴り響いたケータイの着信音に眉をひそめる、ひとりの男子がいた。


 ベッドに入り、眠りに落ちる直前のことだったため、その顔は心底不機嫌そうだ。


「こんな時間にかけてくんなよな……」


 ぽつり、静かな部屋に響いた声は疲れているような、呆れたような声だった。


 真っ暗な部屋の中、着信ランプが点灯して鬱陶しい。


 誰からの電話か、なんて、画面を見なくても大体想像できる。


 今までも何度かこんなことがあったからだ。


 布団にくるまりながらもぞもぞと動きケータイを手に取ってみれば、やはりそこには予想した通りの名前が浮かんでいる。


「はあ……」


 大きなため息を吐き出し、電話に出る。