……今夜は七夕だ。




深夜12時過ぎ。私は静まり返った家を抜け出して、自分の通う高校の前へやって来た。

門にもたれ掛かる人影はとても見慣れた人のもので、私は声をかけた。

「甲斐田、」


名前を呼ばれた人影は私の姿を視界に捉えると、薄い唇の端を釣り上げた。

甲斐田の独特の笑い方だ。

「遅くなってごめんね」

「いいよ。それより見つからなかった?」

「うん。それは大丈夫」

「ならいいよ。行こ、ハナ」