――ブーッ――ブーッ――ブーッ――


「……るさいなあ……」


場面変わって、こちらはマリの部屋。

現在時刻はAM8時。冒頭の不審な音はマリのケータイのバイブ音。


「誰よお……」


丸まった布団からホラーのごとく、にゅっと一本の手が突き出ます。もちろんマリ'sアーム。

どうやら着信があったご様子。相手は


『マリ! 今すぐ起きて! 起きなさい! 起きなさいってば! ウェイクアップ!』


……ご存知、ルイコです。


「起きてるってー……電話に出た時点で少なくとも目覚めてはいるに決まってるでしょ」


一体誰がこの子からこんな冷静な言葉が出ることを予想したでしょう。


「何の用ー?」

『あんたっ! 今日何の日かわかってんの!? 試合よし・あ・い! テニスの試合!』

「うああああああ!」


布団引っぺがして起き上がるマリ。パジャマはなんとくまさん柄。


『やっと気づいた? まあ、私もさっきワリから聞いて気づいたからまだ寝巻きなんだけど。早く用意して! ワリたち、駅で待ってるから!』


さらっととんでもないことを言って、ルイコは電話をぶちりました。


「とたっとっ、とりとりとりあえずずず……ラケットどこ……うわ学校だ!」


無駄に持ってったりするからです。


「どどどどーしよ……いいや、着替えて、顔……洗ってる時間はないか。それからそれから、朝ごはん食べて……」


顔洗う時間なんて朝飯の時間に比べたら大したことないのでは。

部屋をぐるぐる歩き回ってするべきことを整理するマリ。
冷静に見えて時間の無駄。


さあ、試合の時間は刻々とせまっています。