経理部で仕事をしているエリーナは4日ほどすると、ガォンティル社の社員たちも気さくに話をするようになっていた。


「エリーナ、食堂行って早くメシにしようぜ。」


「う、うん。」


「エリーナほんとに1週間したらここを出ていっちゃうの?
ずっとここにいればいいのに。

あなたとても優秀だし、仕事も無駄がないってベテラン経理のおやじたちがみんな話してたわ。」


「ん~~~私はここの他にも仕事しなきゃいけない会社があるし、上の命令だから。」


「そっかぁ・・・せっかく仲良くなれたのに残念だわ。」


「残念だよ。まぁ・・・この会社みたいにけっこう内情がずさんだから君がやってきたんだろうけど、俺たちみんな仕事が好きなヤツやできるヤツってやっぱり素直に尊敬できるしさ、君の見た目のハデさは何かあるんだろうと思っていたけど、慣れてくれば君なりの自己主張なんだなって思えるし、経理に見た目は関係ないもんな。」


「そうよ、そうよ。ちっちゃいエリーナはかわいいわよ。」


「あ、ありがとう。みんな。」


「ところで、営業部のメイタス部長によく話しかけられてるみたいだけど、知り合いなの?」


「えっ??あ、ああ。
メイタス部長は実家が近くで・・・以前からちょっと知っていたので。」



「なぁ~んだ。それでなの・・・。
でも、メイタス部長ってけっこうあなたのことを気に入ってるんじゃないかなぁ。」


「ど、どうして・・・そんなこと?」


「だっていつも総務とか人事とか経理もだけど、他の部署に来るときってちょっと不機嫌っていうか、怒りながらしゃべってくることが多いのよ。

自分たちが頑張って仕事をとってきた分に恥じない仕事をしろとか言っちゃってね。
なのに、あなたにはニコニコ顔なんだもん。びっくりしちゃった。」


「あはは。・・・・そうなんだ。」


「そうそう、俺なんかさ、昨日の夕食に君を誘おうと思って出たら、君は手が離せない仕事してるからだめだってすごい顔されたんだぜ。」


「ええっ、そうだったの?
ごめんなさいね。だけど、私は検査のためにきたから・・・そういうのに付き合えなくて。」


「あ、いいんだよ。君はここに就職してきた新入社員じゃないんだから。
部長の言うとおりなんだって。
それに、部長は怒るときは怖いけど、親身になって社員の悩みとか答えたり、考えたりしてくれるって営業部ではよく聞くしね。」


「うん、いい人だよ。」