「助けてーーー!!!!ひったくりよ!」

周りがザワザワと騒がしくなる。
男は人の間をバイクですり抜けながら逃げる。
そして誰も追って来てないことを念入りに
確認すると近くの橋の下の砂利道に行きバイクを止め、その影に隠れるようにして鞄をあさる。

「手帳、筆記用具、ハンカチ…チッ、
ロクなのねえ、失敗だったか?おぉ!!
財布だ!金は…10万もある!!これは
正解だったな♪」

男はニヤニヤと笑いながらお金を1枚づつ数える。夢中になりすぎて気付いていない、彼に向けられた、軽蔑と呆れ、そして…
面白がるような冷たい眼差しに…

『満足したの?』
「そりゃもちろ…え?」

綺麗な女の声だ。美しい声とそこに混じる冷たい響きが美しさに磨きをかけ、ゾクッとする。まるでこの世のものではないかのように…
それに女の声が聞こえた場所にも男は驚いていた。男は声の聞こえた方へと顔を向ける。