*



瞠目して、優菜は振り返る。


男がひとり、御堂の奥からこちらに歩み寄って来る。

奇怪な男だった。

黒髪を背中まで伸ばし、切れ長の目は炯炯と紅く光っている。

漆黒の着流しを身に纏い、周囲には奇妙な蒼い焰が浮遊している。

その焰の明かりで、ぼんやりと御堂の中が明るくなった。


「美しい娘じゃ……」


男は紅い目を見開き、そろりと優菜の前に膝をついた。