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その女が“鬼”と出会ったのは、ネオンが街を彩る表街の道だった。


「こんな家、こっちから願い下げだっつーんだよ‼︎」


まだ高校生の女は、夜な夜なネオン街を歩き回っていることを、親に咎められた。

しかし、女は反抗期真っ只中だけに、猛烈に反発すると、濃い化粧をしてネオン街へと出て行ったのだった。


妖光を放つネオン街で、女は露出の多い服装でずかずかと歩いていた。

そこで、奇妙な男を見つけたのである。


まばゆい金髪に黒い肌。

耳には幾つものピアスをつけており、いかにも物騒な面差しの男である。

明らかに染髪したと思わしい金髪とピアスがなければ、少し男前なサラリーマンに見えなくもない。

タバコの煙を盛大に吐き出した男は、見るからに獰猛な獣のようであった。



ーーー面白そうなオトコ。



それが女の第一印象だった。


「ねえ、お兄さん?」


女は、瞼を伏せて煙を蒸す男に歩み寄る。

妖艶な声を出して、肌を垣間見せ。

すると男は、ふうわりと目を開いた。

翡翠のような、淡い翠の瞳だった。


「あ?」


男は、町の不良さながらにつぶやき、女を見下ろした。

しかし女は恐れというものを知らない。


「変わった目の色ね。
ハーフ?」


問いかけると、男は自分の目に触れて、しばし黙り込んだ。


「……まあ、人じゃねえからな」

「なにそれ、人じゃない?
ちょーウケる!
人じゃなかったらなんなの?」


けたけたと女は笑う。

普通であれば男は気を悪くするところだが、怒り出すどころか、男は卑屈な引き笑いをこぼした。







「鬼だ」