ケータイ小説 野いちご

カクテルに恋の魔法を。

第四話 油断ならない


 扉がソッと、閉まる音。

 そんな小さな音が、聞こえたような気がする。

 私は「んっ……」と、うなり、「んん~……」と、寝返りを打つ。

 そして、ボンヤリと、まだ寝ぼけたその目を開けた、瞬間。

 …………え? と、一時停止するように、私は硬直した。

 思わず、掛け布団をグッと掴み、凝視してしまう。

 えっと……。あれ?

 どうして?? 私の目、おかしい?? と、私はまだ寝ぼけているのか、のんきに思う。

 私の掛け布団は、爽やかなアップルグリーン。

 目覚めがよさそうな、その色が気に入って、私は、シーツを新調したばかりだった。

 なのに、どうみても目の前のシーツは、黒にしか見えない。

 いつのまに黒になったの? あれ??

 ―――って、そんなわけないじゃない! と、私は寝ぼけている自分に、ツッコミを入れた。

 っぇえ!? あれ!?

 私はビックリして、飛び起きた。

 ここは、私の部屋じゃない!

 私は、目の前に広がる部屋に、眩暈を覚える。

 モノトーンで、無駄なものがない、シンプルでかつ、男性的な部屋。

 いくらなんでも、私だってもう少し、女性らしい部屋に住んでいる。

 って言うか、こんなに広くないし。なに? ここ、どこ!?

 えっと、記憶が曖昧なんだけど、えっと……あれ?

 混乱している私は、髪をかき上げると、ドアから壁へと、その部屋を半周見たところで、ドキリとする。

 あ、あれ? 今のって……。

 私は、見覚えのある人物を見た気がして、壁を向いたまま、一時停止。

 えっと………。え? み、見間違い??

 ソロリと、私はドアのほうに目を向け、その事実を確認する。

 ……あぁ。なんてこと。

 見間違いじゃなかった。

 にっこりと、ドア前に立ち、朝日を浴びる、爽やかな男。

 その見覚えのある人物は、律だった。

 私の中でジワリジワリと、昨日の記憶がよみがる。

 そうだった。

 私は昨日、律に図々しいお願いをして、一晩泊めてもらうことになったんだった。

 それで? それで―――……そう。

 律の忠告も聞かずに、私は調子に乗ってお酒飲んで、それから―――……。

 あぁあぁああっ!! と、私は頭を抱えて叫びたくなった。

 羞恥心がこみ上げる。

 し、信じられない。私としたことが、酔いつぶれるだなんて……。

 ―――っき、気が付いたら朝とか!

 ありえない!! これって、大失態よね!?

 私は真っ青。言葉も見つからなかった。

 そんな私に、律はニッコリと挨拶。

 「おはようございます。歌子さん」

 「―――っおは、おはよう……」

 私は何だか自分が情けなくて、目線をそらして挨拶をした。

「そろそろお目覚めかなと思ったので、様子を見に来たんですけど。あの、とりあえず、掛け布団で身体を、隠したほうがいいんじゃないですか?」

 はぃ?

 私は、意味が分からず、キョトンとする。

 目の前の律は、にこにこと、笑顔。

 日の光を浴びて、爽やかさが倍増している彼は、無駄にキラキラしてる気がした。

 昨日の変な色気はどこにいったのかしら? と、思いながら、確かに癒し系だわと、私はのんきに思う。

 そんな私に、律は愛らしい笑顔のままで、口を開いた。

 「……まぁ、今更ですし、僕としては一向に構わないですけどね」

 何よ。何が??


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