──沢森が来てから一週間、沢森はすっかり人気者になっていた。


「……おかしいなあ……」


休み時間の度に人が集まっている沢森の席を、頬杖をつきながら眺めて、俺はそう呟いた。


相変わらず沢森は、困ったように笑ってるだけ。正直、人気者になるような素質を持ってる訳じゃない。……中学の時だって、どっちかっていうと地味な方だったのに。


だけど今の沢森は、中学の時よりもずっと綺麗になっていて──その見た目と、控えめな性格はどうやらとてもマッチしているようで、クラスの奴等の好感を集めていた。


もや、と心の中に黒い燻りが生まれる。


あの日──沢森と、家の前ではちあわせたとき、あんなにもはっきりと俺は拒絶されたっていうのに、一丁前に、嫉妬する心は持ち合わせているようで。


綺麗な沢森は俺だけが見られる特権だと思ってたのに、なんて、言えるわけもないけど。