あれから数時間。
ようやく、面倒な学校が終わった。
私は部活に入っているけれど、仕事が押しているから仕事を優先する。
事務所へと足を進めていると、ふと携帯が振動し始めた。
「はい。」
電話は、マネージャーからだった。
内容は、まぁ予想がつく。
『葵!はやく事務所に来なさい!スタッフさんは皆待ってるのよ!』
「はい。わかっています。」
『それに今日はドラマの記者会見もあるし、CM撮影だってあるし、いつもより仕事が多い日だからね!ちゃんと、スケジュールは守ってよ!』
「はい。わかりました。今事務所にむかっているところです。」
私はそう言って、電話を切った。
どうして仕事ばかり望むのか。
私はテレビで媚びを売るためにアイドルになったわけじゃない。
女優になったわけじゃない。
ただ、人々を笑顔にできるならと。
私の歌を喜んでくれる人がいるならと。
「お母さん……」
母は、私を応援してくれた唯一の人。
もう、何年も前に。死んでしまったけれど。
三年前。病気で。
そのときはつらかったけれど。
私は母が応援してくれていた、アイドルという仕事を、全うすることに決めた。