ケータイ小説 野いちご

てのひらの温度

Sec.7 いらないもの


温泉はいくつかあり、全て効能が微妙に異なるらしい。効能云々に全く興味のない私は、ちょうど誰も入っていなかった露天風呂に身を沈めた。

肥えた竹林を背に見上げると、さわやかな青空が顔を覗かせる。


紺の話を思い出す。


父親との長い二人暮らし、新しい母親、生まれた腹違いの妹。だんだん歯車の狂っていく紺と両親。きっとこんな暮らしの中で家に居づらくなり、紺はだんだんその存在を消していくしかなかったのだろう。だから、人の顔色を窺って気配を消す技、ホストのバイト、私にくっついて家出。全て説明がつく。

もし、いわゆる“恵まれた”家庭に生まれていたなら、「紺を邪魔だなんて思うはずないよ」と言えたのだろう。私は言えない、そんなこと。本当に紺は疎まれていたのかもしれないし、親が子どもを絶対に見放さないなんて、キレイゴト。

きっと紺は、元々快活な、良くも悪くも純粋な少年だったのだろう。どこで何がどうなったのかは分からない。家庭の事情が原因の全てではないかもしれない。いずれにせよ、紺はアンバランスになってしまった。

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