まだ朝だと主張するような白い光を
立ち上る湯気が幻想的にぼやかして
ゆったりと肩までつかる湯ぶねには、
ペパーミントが浮かんでいる。

爽快感のある香りが広がる浴室は、
天井が抜けていて
夜だと星空が見えて、
朝はこんな風に幻想的だ。

母は私に
「汗を流して来たら
 朝ごはんに行く支度をしてあげる」
といってるんるん♪としながら
浴室の外のドレッサールームで
ドレスを選んだり
髪飾りを選んだりしているのだろう
鼻歌やメイド長と楽しそうに話している
声が聞こえる。

母の心は私を前にすると
構いたくて仕方ないというのと、
王妃の仕事をしなければという
葛藤で『ぐぬぬっ』てなっている。

父と一緒で私が外に出ていくのが
淋しくて仕方ないようだ。

だから、こうやって帰ってくると
最後かもしれないって思ってるのか、
なんとか時間を見つけては
甘やかしに来る。