男装のまま籠に乗せられたあたしは、いつ総司が気づくかとハラハラしながら外の物音に耳をすませていた。


『離れられないようにしてやるよ』と言った声を思い出すと、胸がきりりと痛む。


こんな風に出て行って、総司はあたしが裏切ったと思うかな。


「お待ちください。どなたでしょうか」


外は籠の中から見えないけれど、その声にどきりとする。


斉藤先生だ。


そうだ、新撰組は今まさに二条城の警護中。


きっとここは、どこかの門前なんだろう。


「上様がご招待したご客人でござる。おみ足がご不自由なため、籠のまま城内へお送りする」


前の籠に乗っていた幕府の役人が、外に出て斉藤先生と話をしているのが聞こえる。


どうやら、お役人の身分が確かで信用のあるものらしく、あたしの籠は中を調べられることなく、城内へ入れられることとなった。