「……楓、あとは頼んだ!」


決意に満ちた低い声。


あっと言う間もなく、総司が隣から副長のもとに駆けていく。


「だめええええっ!」


総司は駆ける間、空を仰ぐ。


すると、頭髪の間から灰色の耳が、お尻からしっぽが飛び出した。


ぎしぎしと軋みながら、一回り太くなる腕に、鋭く伸びる爪。


「総司ぃっ!」


狼化が体の負担になることを、わかっているくせに……!


「なに、あれ……沖田は人狼だったの?」


槐の驚いた声が、遠くから聞こえた気がした。


けれど、そちらを気にしている余裕はない。


「うがうっ!」


狼化した総司は跳躍し、副長と山南先生の間に割って入る。


「総司、てめえ……何て無茶しやがる!」


副長が眉をひそめる。


「副長、沖田から離れてください!」


斉藤先生がもののけを蹴り飛ばしながら叫んだ。


もう、総司に任せるしかないと覚悟したんだろう。


副長は、舌打ちしながらあたしのそばへと駆け寄ってきた。