「土方くん……」


「……悪いな。人の恋路を邪魔する趣味はねえんだが」


土方副長はゆっくりと、山南先生と槐の方に近づく。


後ろの二人は、じっと黙って立っていた。


「山南さん、先にこいつの詮議をさせてくれねえか。

話を聞いたら、あんたに返すから」


副長は怖い顔をしていたけれど、どうやら槐を無理やりどうにかするつもりはないようだった。


「素直に話してくれれば、ひどいことはしないと約束する。

とにかく、まず聞かなきゃいけねえことがあるんだ」


「……ここじゃまずいのかい?

きみと槐を密室で二人きりにさせるつもりはないよ」


反論した山南先生に、副長は小さくため息をついて目を伏せる。


「信用されてねえ……か。

いいだろう。ではここでお前に質問する」


副長は細く開いた目で槐をにらむと、低い声で言った。


「……山南さんの腕を治す薬があるというのは本当か?

そしてなぜ、山南さんを新撰組から脱退させようとした?」


その質問を聞いた槐は、抵抗せずに答える。