商店街から一歩も休まずに走っていると、心臓はバクバクと悲鳴をあげ肺がキュッと締め付けられた。


それでも、一分でも一秒でも早く家に帰るために、あたしは足を止めることなく、前へ前へと進んでいった。


呼吸は乱れ、足がもつれ、額にいつくもの汗の玉が浮かんだ時、ようやく玄関まで辿りつくことができた。


あたしはもどかしく鞄から鍵を取り出し、ガチャガチャと音を立てて玄関を開ける。


「蒼太……!!」


鉛のように重たくなった足をムチ打ち、階段を駆け上がる。


そして自分の部屋のドアをあけた……その瞬間。


パンッ!と音が響き、頬に鋭い衝撃が走った。


気が付けばあたしの体は廊下に倒れ込んでいて、一瞬目の前は真っ白になった。


な……に……?


数秒ののちに頬に痛みを感じ、鼻から液体が流れて床に落ち、鼻血が出ているのだということがわかった。