大体の者が役割を持っていた。
響は破壊の監視。
綺羅は一番の権力者。
二番目に一矢。
内部を統括してるのは美波姐さん。
日向は俺達と誰かにすれ違いが起きると、勝手に表に突き出される。
悠は主人格。

それは突然きた。
腕がうずうずする。
切りたくて仕方ない。
でもこれは俺の体ではなく、翔子の体。
まかりなりにも女の体。傷を残すわけにはいかない。
すでに破壊のサナ、以前の一矢や翔子自身で切った傷が目立つ。
これ以上汚くするわけにはいかない。
それに何より、『切りたい』という衝動に負けたくなかった。
必死に震える左腕を押さえた。

絶対切らない。

何度も何度も、切りたい衝動が来る度に、そう強く思った。
心配してくれたミサや陽向に「大丈夫だから」と、無理矢理笑顔をつくった。
代わりに翔子が切らなくなった。
毎日のように切っていたらしい翔子に、アムカの衝動がこなくなった。

これが俺の役目か……

ぼんやりとそんな事を思った。
翔子の代わりに、アムカの衝動を抑える。
それが俺の役目だった。