―あの時と変わらないくらい


 あなたのことを愛しています―














「むかしむかし、あるところに旅の王子がいました。」






小さな男の子は

大きな絵本を開き、物語を読み始める。



わたしは、その子の隣に座って、絵本を覗きこんだ。







男の子はわたしの顔を見ると満足そうに微笑み、お話を始める。





「旅の途中、ある国で
 道に迷った時のこと。…」




王子は森の中の教会で、美しい姫と出会いました。




「なんと美しい姫だろう。」

王子は一目で姫を好きになりました。





二人は毎日森の教会で会い、

やがて深く愛し合うようになりました……。




ところがそのことを聞いたこの国の王は、たいへん腹を立ててしまいました。




「我が姫を
 たぶらかす者は誰か?
 すぐに捕らえよ!」





王は王子を捕らえると、こう言いました。





「旅の王子よ、そなたは
 姫を好いていると言うが、
 その言葉に偽りはないか?」




「姫は私の心の幸い。
 姫の愛さえあれば、
 いかなる試練も
 喜びに変えることが出来ます。」




「ならばはるか遠く、
 この世の果ての
 外国に旅立つが良い。」





「無事戻ることがかなえば、
 その時そなたの
 言葉を信じよう。」





こうして王は、王子を遠い国へ追放して
しまうのでした……。





遠い国へ旅立つ日、
悲しみに打ちひしがれる姫に王子はこう告げました。





「私は旅立たなければ
 なりません。でも、どうか
 悲しまないでください。」





「私の心はあなたのもの。
 たとえ世界の果てからでも、
 いつか必ず迎えに参ります。」




それから姫は毎日、
森の教会で王子の無事を祈りました。









いつか、王子が迎えに来る日を信じて……。