いつもと変わらない車内の景色。



今朝も同じ時間の電車に乗り、同じ車両の同じ席に座って、私は本を広げている。時おり、本の陰から覗く車内の景色もいつもと何ら変わらない。



私の真ん前に立っているのは、スーツ姿の男性。隣に立っている若い女性は、今朝はジーンズではなくスカートを穿いているけど同じ人。向かいのシートに座って本を広げている女性も、ひしめき合う人たちの顔ぶれも。



車内に飛び交う高校生たちの笑い声は、昨日よりも少しだけテンションが低く感じられる。それでも彼らの声は木々の合間で囀る小鳥たちのように、賑やかで楽しげで羨ましい。



彼らの囀りを聴き流しながら、私は広げた本に視線を落した。文字を追いかけようとするのだけど、目の前を文字が通り過ぎていくだけ。ちっとも頭の中に入ってこない。



とくに体調が悪い訳でもなく、何かあるという自覚はない。自分でもよくわからないけれど、きっと今日は本を読みたい気分ではないんだろう。



まだ宮代駅に到着するには早いけど、諦めて本を閉じた。