昨日の私の勘違いを美波に話したら、面白がって笑いだした。
「そんな訳ないでしょ? 笠子主任はどう見ても浮気なんてするような人には見えないし」
美波はけらけらと高笑い。
騒がしい店内でも一際響く笑い声に、周りに居たお客さんたちの視線が突き刺さる。
気づいた美波が口を結んで、人差し指を口元へ。私も、同じ仕草で頷いた。
土曜日のお昼時のイタリア料理店。さほど広くない店内には、私たちと同じ年頃の女性客が多く見られる。ランチメニューにはパン食べ放題とドリンクバーがついているからお得だし、つい話し込んで長居するのには最適だ。
しかも最寄駅からは、徒歩圏内という好立地。茜口駅前にも、こういうお店があったらいいのかもしれない。
と、つい考えてしまうのは職業柄?
「でもさ、そんな言い方されたら美波だって、絶対に勘違いすると思うよ?」
「そうかなあ……、陽香里の願望じゃないの?」
そう言われると、ちょっと胸が痛い。
願望というほどでもないけど、『もし笠子主任に、奥さんと子供が居なかったら……』と少しでも考えてしまったのは事実だから。