好きなはずのバイクの唸る音が、今は耳障りでしかなく、それが余計に苛立たせる。
出て行った棗を追い、俺はバイクを走らせている。
心葉と紘は、万が一棗が帰って来たときのために残して来た。
現状俺一人で走っている。
蒸し暑い空気が頬を撫で、一滴の汗が流れ落ちる。
やっぱり、伝えるべきじゃなかったんだ。
今更どうにもならない後悔に眉をしかめる。
あいつが平静でいられるはずないのに、あいつは聞いた瞬間飛び出して行くと。
「わかってたはずなのに……」