この子のことが好きだ。

そう気付いたら、なんだかわくわくするじゃない。
恋愛友愛敬愛自己愛。
好きにも色々あるけれど、男だろうが女だろうが、好きな人はいるじゃない。

そうやって思える相手に、自分のことを好きと感じて貰えたなら、そりゃあ、やっぱり、嬉しいじゃない。跳び上がりたくなるじゃない。



「そんな訳でさ、リッカちゃん、私のこと好き?」

「ぶっちゃけ好きではない」

とまあ、あっさりばっさり、撃沈したのであったとさ。斯くも難しき友情かな。

「えええ、酷いよ辛いよ惨過ぎるよう。嘘でも好きって言ってよー、語尾にハート付く感じで」

「私なら、嘘で好きとか言う奴は信用ならなくて関わりたくもないけどね」

「じょじょじょ冗談に決まってるじゃーん、あっははー。リッカちゃんってば相変わらずのツンデレさんなんだからーあ」

嗚呼! リッカちゃんの無言の圧力が怖い!

実際リッカちゃんにデレなんてない、デレ期なんて一万と二千年待っても来ない。この子ってばツン街道爆走中の、年がら年中無愛想さんなんだもの。なんて一途なんでしょう。その一途さ、ツンからデレへシフトチェンジしてみる気ありませんか。

リッカちゃんってまるで、メントールの飴だと思う。甘ったるさとは無縁だけれども、そこが良い、みたいな。

「やめてえ、ただでさえ悪い目付きをこれ以上悪くしないでえ」

「それが出来たら今頃友達の一人や二人いるから」

「やめてえ、自虐に走るのはやめてえ、笑えないよ、事実過ぎて笑えないよ」

「うん、自分で言ってて泣きそう」

他人が苦手で社交が苦手で努力も苦手な妥協の化身、自分の言葉に自分でへこむ脆くてビビリな硝子のハート。それが我等がリッカちゃんなのであーる。

つまるところ、リッカちゃんは超が付く程面倒臭い子なのです。

面倒臭いけれど、だけどそれは嫌いとは違うでしょう。そんな面倒臭いところが、私は好きじゃないけれど、だけどそれは嫌いとは違うでしょう。

「リッカちゃんさ、今幸せなの? 学校生活楽しい?」

「なんで」

リッカちゃんが一瞬困った顔をしたの、私、見逃さなかったよ。

「リッカちゃん、コミュニケーション能力ひっくい癖に生活力までひっくいんだもの。貴女ちゃんと栄養あるもの食べてるの? アイスばっかり馬鹿食いしてるんじゃないの? お母さん心配で授業中も眠れないわあ」

「ミチルちゃんの娘になったつもりは更々ありませんけど」

「ミチルママの胸で泣いても良いのよ。さあ、飛び込んでおいで」

「気色悪いからやめて」

「きーずーつーくー」

ミチルママ渾身の“飛び込んでおいでポーズ”が一蹴されるだなんて。なんと薄情な娘。泣いても、良いですか。

「別に友達いなくてもどうにかなってるし、生活も出来てるし」

確実に生活出来てないに両手を挙げてニ票。

「またまたあ、そんな事言っちゃってえ。なんなら私がリッカちゃんの友達第一号に――あっ、ごめんごめん間違えた」

「え」

オセロや囲碁じゃあるまいし、白黒はっきりするなんて、無理だよ無理。リッカちゃんだってきっと、興味がない訳じゃないと思うんだ。諦めてもいないと思うんだ。

でも途中、もういいやってなっちゃうんだと思うんだ。

ぜーんぶ私の想像だけど、リッカちゃん、まだやりたい事たくさんある筈、喋りたい人いっぱいいる筈。だってだって彼女はいつも、踏み出そうとしてるもの。

本当はもっと、好きになりたいものも人も、なって欲しい人も、いるんでしょう。

今が充分幸せならさ、今以上の幸せを願ったって、良いじゃない。レッツエンジョイ青春謳歌。

「こうやって話せてる時点で、友達なんじゃない?」



【君が不幸でありますように】