好きな動物は何?と訊ねられたら迷わず猫と即答するだろう。
ぴょこっとした三角の耳にキュートな鼻、触り心地最高なぷにぷにの肉球に針金が入っているかのようにうねる尻尾、極めつけはくりっとした大きな瞳。
あのツリ目がちな瞳で見つめられると、居ても立ってもいられない感情が込み上げてくるのは私だけじゃないはず。
登校中に野良猫を見つけたものならば、目を輝かせてその場にしゃがみ込んでしまいたくなる衝動に駆られるのは最早日常茶飯だ。

そんな大の猫愛好家である私だけど、誰も立候補者がいなかったからただなんとなくやってみた、なんて軽い理由で前期美化委員を務めていたりする。
お母さんの影響で元々土いじりが好きな方であった私は、学校の庭に並ぶ色とりどりの花の世話をすることは気晴らしになると考えていたし、さして面倒と感じることはなかった。
しかしお年頃の中学生ともなれば、土いじりなんて年増臭いことやってられないという生徒も多くいるわけで、A組の美化委員である奈良くんが以前無断でサボタージュを繰り返していたのが一ヶ月前の話だろうか。

夏休みが明け、前期の委員の仕事も残すところひと月となった今日、私は日課となりつつある花壇の手入れをサッカー部の奈良くんと共にしていた。