偶然が呼び寄せた出会いは実に呆気なく、時の流れは驚くくらいに早い。




凪の家に訪れたのは先週末の金曜日。



あれから土、日を挟んで迎えた月曜日。




相変わらずの退屈な授業、何の変哲も変化もない教室。クラスメート。



空間を取り囲む環境、雰囲気。




丁度お昼休み直後のこの時間帯には、睡魔が容赦なく襲い掛かってくる。



古文の文学史云々をひたすら呪文の如く唱える教科担任の声は、眠気に拍車を掛けるものでしかない。




それは周りの生徒も例外なく同様で、誰ひとりとして授業に真面目に取り組もうと試みている人などいない。



「…………ふわぁ」



隠すことなく堂々と欠伸を漏らせば、即座に教科担任のきつい視線を突き付けられた。



30前後の男教師は、険しい顔で口を開きかけたが、こちらに反省の色が垣間すら存在しないことに気が付いたのか、諦めたように溜め息を吐くだけだった。




すっかり重たくなった瞼を閉じる間際に、ふと何の気なしに窓の外へと視線を走らせる。



不思議と頻繁に窓際の席に配置される故か、意識が遠く離れた外の世界に向けられるのは、割と少なくない。



「はーい、パスこっちこっちー!!」

「…………っ」



垢抜けた無邪気な声の主に、俺は1度のみならず2度目も耳を強く惹き付けられた。




薄れゆく意識は一瞬で覚醒する。



頭で考えるよりも先に、思考があっという間に彼女で埋め尽くされていた。




自分でも気が付かないくらい無我夢中になって彼女を探していれば、その姿はいとも容易く視界に飛び込んできた。